「接客だから我慢」は終わりへ。10月1日からカスハラ対策が会社の義務に
「お客さま相手だから、少しくらいの暴言は仕方がない」。そんな我慢を、働く人ひとりに背負わせないためのルールが始まりました。2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)を防ぐための措置が、すべての事業主に義務づけられています。
変わったのは「個人で耐える」から「会社が守る」へ
厚生労働省によると、全国約8,000の企業・団体のうち、過去3年間に「顧客等からの著しい迷惑行為」の相談があったと答えた割合は27.9%。前回調査より8.4ポイント増えました。内容は「継続的・執拗な言動」72.1%、「威圧的な言動」52.2%、「精神的な攻撃」44.7%の順でした。
新しい指針では、会社はカスハラに毅然と対応して労働者を保護する方針を示し、相談窓口を整え、相談後の事実確認や被害者への配慮、再発防止を行う必要があります。接客担当者だけでなく、電話・SNS対応、取引先とのやり取り、学校や病院など施設の利用者に対応する人も関係します。
「苦情=カスハラ」ではありません
大切なのは、正当な申し入れまでカスハラ扱いしないことです。制度上のカスハラは、①顧客や取引先などの言動で、②業務の事情に照らして社会通念上許される範囲を超え、③働く環境を害するもの、という3つをすべて満たす場合です。
たとえば商品の不具合を落ち着いて伝え、交換や説明を求めることは通常、正当な申し入れです。一方、暴言や侮辱、脅すような言い方、同じ要求を長時間繰り返す、帰らずに拘束する、契約とかけ離れた要求をする――こうした言動は、内容や状況によってカスハラに当たり得ます。
働く人が今日確認したい3つ
- 相談先をスマホに保存する
社内窓口、直属の上司、夜間や一人勤務時の連絡先を確認します。「何かあったら相談」ではなく、誰に・どの手段で連絡するかまで決めておくと動きやすくなります。 - 事実を短く記録する
日時、場所、相手の言葉や行動、要求内容、同席者、こちらの対応を書き残します。評価や推測より、見聞きした事実を具体的に。録音は会社のルールも確認し、無理ならメモだけでも構いません。 - 危険なら接客を続けない
一人で説得し続けず、同僚や責任者を呼び、距離を取って安全な場所へ。暴力や差し迫った脅迫など緊急性があるときは110番、緊急ではない警察相談は#9110です。
相談した人を責めない職場に
「対応が悪かったから怒らせたのでは」と、被害を受けた人の接客だけを責めるのは避けたいところです。指針は、相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないことも求めています。相談を受ける家族も、まずは「怖かったね」「記録して会社につなごう」と受け止めることが支えになります。
対策の義務化は、すべてのトラブルをその場で解決できるという意味ではありません。けれど、働く人がひとりで抱えず、会社として判断し、守る仕組みをつくる大きな一歩です。勤務先のルールが見当たらなければ、まず相談窓口と緊急時の引き継ぎ方法を確認してみてください。
出典
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(改正法公布:2025年6月11日/防止指針公布:2026年2月26日/施行:2026年10月1日)
- 厚生労働省Webマガジン「従業員を守るために―カスタマーハラスメント対策の新ルール」(2026年8月20日公開)
- 厚生労働省告示第51号「カスタマーハラスメント防止指針」(2026年2月26日公布、2026年10月1日適用)